本発明は、山岳地帯等に設置された送電線鉄塔や送電線の状況をヘリコプターによって空中から巡視する際に鉄塔を特定し易くするために鉄塔毎に表示される鉄塔番号を目視により識別するのに好適な鉄塔番号表示方法、及び鉄塔番号表示構造に関する。
送電線鉄塔には、空中、或いは地上からの巡視に際して目視による確認により鉄塔を特定できるように管理番号が付されている。
ヘリコプターによる空中からの巡視に際して鉄塔毎の管理番号を判別し易くするために従来は鉄塔の頂部に近い外周面に巡視用番号札を取り付けていた。従来の巡視用番号札は、FRP板等の軽量、且つ耐久性の高い樹脂から成る標識板に、アラビア数字からなる番号を記載した構成を有し、四角柱、或いは四角錐状の鉄塔頂部の対向する二面、或いは四面に金具によって固定されていた。
しかし、鉄塔の頂部に近づくほど巡視用番号札を固定可能な面積が狭くなるため、巡視用番号札の面積が極限されて表示可能な文字が小さくなり、また一枚の巡視用番号札に記載する数字の桁数が増えるほど個々の数字が小さくなるため、空中からの判読が困難となる傾向があった。また、巡視用番号札は板材から構成されるため、風雨から受ける圧力が大きくなり、破損し易く寿命が短いという問題がある。また、取付け金具も腐食、破損し易い環境にあるため、比較的短期間での巡視用番号札の交換が必要とされる。巡視用番号札の交換は高所による作業であるため多大な労力を要する危険な作業となるばかりでなく、巡視用番号札のコストが膨大になるとう問題もある。更に、風圧、耐久性低下により巡視用番号札が落下する危険もあった。
特許文献1には従来の巡視用番号札に代わる鉄塔番号表示方法が開示されている。この表示方法は、鉄塔を構成する主柱と水平支材と斜支材に対して一定の数値を表示するルールに基づいて選択的にペイント着色することによって、徒歩による地上からの巡視において鉄塔番号を確認できるようにしている。これによれば、鉄塔を構成する鉄材を着色することにより鉄塔番号を認識できるように構成しているため、風圧による破損等といった耐久性上の問題や、交換手数の増大という問題は生じない。
しかし、この従来技術にあっては、アラビア数字等の算用数字の形状を実際に鉄塔に表示する訳ではなく、例えば0〜9の数字について、主柱左上に着色がある時には1を意味し、斜支材左上に着色がある時には2を意味する等々、と個別に対応関係を人為的に決めておき、着色された鉄材を見てどの数字に該当するかを対照表を照合しながら確認する必要がある。このため、地上から確認する際にも着色された鉄材が意味する数字の確認に時間を要し、鉄塔番号の読取りが容易でない作業となる。特に、遠方からの確認作業となる空中巡視において一本一本の鉄材の着色状態を観察するとすれば、更に数字の判断が困難となることが明かである。また、特許文献1においては徒歩による巡視員による確認作業を想定しているため、番号を表示する箇所が比較的低所とならざるを得ず、番号表示箇所が樹木によって遮られて判読不能となる場合も多々ある。
実用新案登録第3126510号
以上のように従来の鉄塔番号表示方法にあっては、アラビア数字等の算用数字の字体を一目見て直ちに理解できるように表示するのではなく、一定の人為的なルールに基づいて着色された個々の鉄材に特定の数字を割り当てることにより個々の鉄材が特定の数字を意味するように取り決めていたに過ぎないため、巡視員が目視により直ちに数字を特定、理解することは容易でなかった。特に、空中からの巡視においては遠方からの確認とならざるを得ないため着色部が意味する数字を理解することは更に困難であった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ヘリコプターを利用した空中巡視においても容易に判読が可能となるように、一目で確認できる大きなアラビア数字を表すように鉄塔を構成する鉄材に着色を施すことを可能にした鉄塔番号表示方法、及び鉄塔番号表示構造を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の鉄塔番号表示方法は、送電線鉄塔を構成する鉄材に着色することによって鉄塔番号を表示する鉄塔番号表示方法であって、前記鉄塔は、二本の縦材と二本の横材から成る矩形の枠体と、該枠体の2つの対角線に沿ってX字状に固定された二本の斜材と、から成る数字表示領域を備え、前記数字表示領域を構成する前記6本の各鉄材に対して選択的に着色することによって0〜9までの何れかのアラビア数字を表示することを特徴とする。
六本の鉄材を利用してアラビア数字として認識できる形状を表示することができるので、一目瞭然で数字を読取ることが可能となる。また、一つの数字表示領域は一つの数字を示しているため、目視が容易な大きな数字を表示することができる。高さ位置が異なる数字表示領域に表示される数字の桁数を異ならせるルールを用いることにより、鉄塔番号を構成する数字が多くなったとしても、個々の数字を大きくできるため、番号全体として遠方からの判読が容易となる。
本発明の鉄塔番号表示構造は、二本の縦材と二本の横材から成る矩形の枠体と、該枠体の2つの対角線に沿ってX字状に固定された二本の斜材と、から成る数字表示領域を備えた送電線鉄塔における鉄塔番号表示構造であって、前記数字表示領域を構成する前記6本の各鉄材に対して選択的に着色することによって0〜9までの何れかのアラビア数字を表示したことを特徴とする。
本発明の鉄塔番号表示構造は、略四角柱形状、又は略四角錐形状を有する前記送電線鉄塔の2つの対向する面に夫々前記数字表示領域を設けたことを特徴とする。
本発明の鉄塔番号表示構造は、前記各鉄材の表面のみに着色したことを特徴とする。
各鉄材の片面(表面)のみに着色することにより裏面側から見た場合には着色部を確認できないので、他の数字表示領域を構成する鉄材と誤認することを防止できる。
本発明では、鉄塔の送電線支持用のアームの基部に設けられる特定の枠組み構造を数字表示領域として利用して鉄材に着色することにより、アラビア数字として認識できる数字を大きく表示するようにしている。このため、ヘリコプターを利用した空中巡視においても容易に判読することが可能となる。
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る鉄塔番号の表示方法により鉄塔番号(123)を表示した鉄塔の全体図を示す説明図であり、図2は本発明による表示方法(鉄塔番号表示構造)の一例を示す説明図である。
送電線鉄塔1は、地盤等に固定される脚部2と、脚部から上方に延びる本体3と、本体3から横方向に突出して送電線Cを支持するアーム4と、から構成されており、鉄材(アングル材、角パイプ、H型鉄材等)を縦、横、斜めに組み付けた構成を有している。本体3は、四角柱、或いは四角錐状の構成を有している。
また、アーム4を固定した本体3の部位には、図示のように、二本の縦材(鉄材=主材)T1、T2と二本の横材(鉄材=水平支材)Y1、Y2から成る矩形の枠体10と、枠体10の2つの対角線に沿ってX字状に固定された二本の斜材(鉄材=斜支材)S1、S2と、から成る数字表示領域20を備えている。
この数字表示領域20として利用される6本の鉄材から成る「矩形+X字」の部分は、既設の送電線鉄塔が一般的に有している鉄骨構造である。本発明では、全ての鉄塔に共通する「矩形+X字」形状の鉄骨構造を利用して、一目でアラビア数字として視認可能な着色を選択的に施すことによって、空中、地上に関係なく遠方からの巡視においても間違いなく判読できる数字を表示するようにしたものである。
本発明の特徴的な構成は、送電線鉄塔を構成する鉄材T1、T2、Y1、Y2、S1、S2に対して選択的に着色(太線で示す)することによって鉄塔番号を示すアラビア数字の字体を表示するようにした点にあり、具体的には、数字表示領域20を構成する6本の各鉄材T1、T2、Y1、Y2、S1、S2に対して選択的に着色することによって0〜9までの何れかのアラビア数字を表示するようにした点にある。
図1に示した鉄塔においては、各アーム4に対応して高さの異なる三箇所に数字表示領域20が配置されており、例えば、最下部の数字表示領域を一の位を示すために利用し、二段目の数字表示領域を十の位を示すために利用し、最上段の数字表示領域を百の位を示すために利用する。或いは、上記とは逆に、最上段を一の位とし、順次十の位、百の位となるようにしてもよい。
上述のように「矩形+X字」形状の数字表示領域20は、アームを支持する本体3の側面以外の他の2側面に設けられているため、2側面に夫々設けた数字表示領域20を構成する鉄材の表面側(外側)に同一の数字を表す着色を行うことにより対向する二方向から空中巡視した場合に当該鉄塔の番号を読取ることが可能となる。なお、仮に数字表示領域20を構成する鉄材の裏面側(内側)にも着色するとすれば、一方向からの確認作業において手前側の数字表示領域に含まれる鉄材なのか、或いは反対側の数字表示領域に含まれる鉄材なのか誤認、混乱が起きるため、個々の鉄材の着色面は表面側のみとするのが好ましい。なお、ヘリコプターによる巡視は、送電線Cに沿って移動しつつ行われるため、アーム4が固定されていない2つの側面に夫々設けた数字表示領域20の各表面(外側)に着色を施すこととなる。
次に、図2に基づいて数字表示領域を構成する六本の鉄材に塗料によって着色(鉄材とは異なった目立つ色、例えば、赤色、黄色、橙等)を施すことによってアラビア数字0〜9を表示した例について説明する。
まず、数字「1」を表示する場合には、6本の鉄材のうちの一方の縦材T1(T2でも可)の表面全体に着色を行う。一本の縦材T1に他の鉄材と異なった色の着色が施されているため、巡視者はこれをみて数字「1」であると容易に認識できる。
数字「2」を表示する場合には、二本の横材Y1、Y2と斜材S1に着色してZ字を描くことにより数字「2」を象ることができる。
数字「3」を表示する場合には、二本の横材Y1、Y2と、二本の斜材S1、S2の右半分だけに着色することにより数字「3」を象ることができる。
数字「4」を表示する場合には、縦材T1、横材Y2、及び斜材S1を着色することにより数字「4」を象ることができる。
数字「5」を表示する場合には、横材Y1、Y2と、斜材S2を着色することにより数字「5」を象ることができる。
数字「6」を表示する場合には、横材Y2と、斜材S1と、斜材S2の下半分を着色することにより数字「6」を象ることができる。
数字「7」を表示する場合には、横材Y1と、斜材S1とを着色することにより数字「7」を象ることができる。
数字「8」を表示する場合には、横材Y1、Y2と、斜材S1、S2とを着色することにより数字「8」を象ることができる。
数字「9」を表示する場合には、横材Y1と、斜材S1と、斜材S2の上半分とを着色することにより数字「9」を象ることができる。
数字「0」を表示する場合には、縦材T1、T2と、横材Y1、Y2とを着色することにより数字「0」を象ることができる。
以上の表示例によれば、六本の鉄材を利用してアラビア数字として認識できる形状を表示することができるので、鉄材毎に番号を割り当てる等の確認が面倒な表示方法を用いることなく、一目瞭然で数字を読取ることが可能となる。また、一つの数字表示領域は一つの数字を示しているため、目視が容易な大きな数字を表示することができる。高さ位置が異なる数字表示領域に表示される数字の桁数を異ならせるルールを用いることにより、鉄塔番号を構成する数字が多くなったとしても、個々の数字を大きくできるため、番号全体として遠方からの判読が容易となる。
また、最下部のアーム4に対応して設けられている最下部の数字表示領域20の高さ位置は、通常、地上から延びる樹木の高さ位置よりも高くなるように設定されているため、樹木によって遮蔽されて判読が困難になるという不具合はない。
また、本発明による鉄塔番号表示構造によれば、風圧等による損傷、落下が皆無となり、交換も不要となり、労力の低減、コストダウンを図ることができる。
なお、数字表示領域20に対する着色は、既存の鉄塔に対しては通常の塗装工事に際して実施すればよく、新設の鉄塔に対しては製造時に着色しておくこととなる。
本発明による表示方法(鉄塔番号表示構造)によれば、ヘリコプターを利用した空中巡視のみならず、地上からの巡視に際しても判読が容易な鉄塔番号表示を行うことができる。
本発明の一実施形態に係る鉄塔番号の表示方法により鉄塔番号を表示した鉄塔の全体図を示す説明図である。
本発明による鉄塔番号表示方法(鉄塔番号表示構造)の一例を示す説明図である。
符号の説明
1…鉄塔、2…脚部、3…本体、4…アーム、10…枠体、T1、T2…縦材(主材)、Y1、Y2…横材(水平支材)、S1、S2…斜材(斜支材)、20…数字表示領域
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